【分身ロボットカフェのパイロット体験レポートを書いていただきました!】Taiyoくんのレポート!

分身ロボットカフェDAWNの第二期パイロットである望月太洋くん(以下、Taiyoくん)の体験レポートです。

Taiyoくんは、しっかりしたレポートを寄稿していただいたので、本記事にそのまま掲載させていただきました。

以下からどうぞお読みください。

分身ロボットカフェDAWNVer.β2.0 にパイロットとして参加して

分身ロボットカフェへの参加経緯

 2 年前に事故に遭い、1 年半入院をしていたが、事故後まもなく学校に戻ることよりも早く働いてお金を 稼ぎたいと思うようになっていた。今後生きるためには多くのお金が必要になると思ったからだ。ベッドの 上で僕に出来る仕事や働き方についてもいろいろ考えてみたが、どれも現実味がなく働くことへの第一歩が わからなかった。僕が毎日のように「働きたい」と言っていたので、伯父が TV で見かけた OriHime パイロ ットなら僕にもできるのではないかとオリィ研究所にコンタクトを取ってくれた。伯父が応募してくれた第 1 回目のカフェの時には僕はまだ入院中で 17 歳だったこともあり不採用だったが、第 2 回目の募集の時に オリィ研究所から改めて連絡をもらい応募することになった。現在は退院して穏やかに過ごしているので、 第 2 回目の時期だったからこそ勤務に専念することが出来たと思う。

OriHime 操作について

 勤務前に OriHime(小)の操作をしたのは約 30 分×3回だった。ログインの方法、OriHime の首の動か し方(見る方向の変え方)、OriHime の動作方法、プレゼンシステムの使い方、接客の練習をした。マンツ ーマンで教わったので自分のペースで理解することが出来てとてもわかりやすかった。OriHime とプレゼン システム両方にログインすることが難しく感じた。

 カフェでのお客さんからの質問で、「OriHime の操作をどのくらい練習したのですか?」「どのように操作し ているのですか?」ということを多く聞かれた。 僕はカフェにあたり新たに購入した機器はなく、家にある PC だけを使用している。僕は目にも障害がある ため PC を大きめの TV 画面に映し出し、拡大して画面を見ている。操作は、『クチマウス』というマウス機 器をサイドテーブルに固定して口元に近づけ、PC の操作をしている。

勤務前の心境

人生初めての仕事だったので楽しみな反面、ちゃんと仕事を全うできるか不安が大きかった。

シフトスケジュールが直前まで決定しなかったので、日頃の日課(身体的ケアやリハビリ)との調整が心 配で気持ちに焦りがあった。初対面のお客さんと会話が成り立つか心配だった。実際の勤務の時間に体調が 安定しているかということも不安にあった。

初勤務について

接客用の台本の言葉や自分で考えていた接客のためのセリフは頭に入っていたけれど、自己紹介をするときには緊張して言葉が出なくなってしまった。注文はちゃんと取れたが、フリートークでは頭がいっぱいに なり会話というより一方的に話しかけて終わってしまった。最初の 1 時間はとても長く感じた。

※勤務としての 3 週間の様子は、毎回多くの人と出会い会話をすることの刺激が強く必死だったので、今あまり思い出すことができません。大まかな点は毎回のアンケートで回答済みなので省略させてください。

分身ロボットカフェで働いてみて

・僕は人見知りな性格だが、ロボットを介してなら初対面の人とでもとても話しやすかった。それは、 相手にはこちら側が見えないことで自分の容姿や状態を気にすることなく会話に集中できたからだと思う。

・障害者や特定の場所から出かけにくい人、遠方にいる人が、あらゆる人に出会うことができる良さが ある。

・障害者同士の繋がりができ、みんなの頑張りが自分のモチベーションを上げ励みとなった。

・カフェに来店したお客さんと繋がって刺激をもらい、新しいことに挑戦したいという意欲をもらった。

・売店では、人と会話するより人を観察する時間の方が長く、あまり Orihime が居ることの良さが出せなかった。

クロージングパーティーに出席して

 今まで Orihime を通して見ていたカフェは理科の実験室のように見えたが、実際にカフェに入ってみると広く温かい雰囲気でまったく違って見えた。OriHime から見える景色は、カフェのほんの一部で狭い範囲 しか見えていなかったことを実感した。

 同じ OriHime のパイロットの一人である先輩が企業に就職することが決まり、僕も先輩のようになりたいと勇気づけられた。今後の目標が明確になった気がした。

 受傷してから特に行きたいと思う場所が無かったが、このカフェに参加して初めて遠出をしてでも行きた いと思える場所がカフェだった。オリィさんに誘われた時は躊躇したが、実際に往復 6 時間をかけて行って みて、自分が働いていたカフェの様子やスタッフの皆さんに会えてとても嬉しかった。

改善点・改良点について

・お客さんの声が聞き取りづらかったので、全員にマイクを付けるなど一人ずつにマイクが近い方がいいと思う。

・今回は手前のお客さんが見づらかったので、OriHime が正面を見ている状態でお客さん全員の顔が見えるような視界の位置がいいと思う。

・ジェスチャーを使うとお客さんがとても喜んでくれるので多く使いたいが、自分の好みでよく使うジャ スチャーを画面の上にもってこられるようにしたかった。スクロールをしてジェスチャーを探すのが大変だった。

【 カフェのお客さんからの質問や主な会話内容 】

・どこにいる(住んでいる)のですか?
・OriHime の操作は簡単ですか?
・OriHime を使ってどこへ行ってみたいですか?
・OriHime を使ってどういう仕事をしてみたいですか?
・どうしてパイロットになろうと思ったのですか?
・『なんでやねん』の動作をやってみてください。
・どうやって OriHime の操作をしているのですか?(PC,くち操作等)

分身ロボットカフェを終えて

仕事をするのは緊張感と責任が伴うものだと初めて経験した。いろいろな人と出会って繋がりを持てたお蔭で、まだまだ自分に出来ることがあると思うようになった。僕一人で仕事をしたわけではなく、カフェに いたスタッフの方々や関わった皆さんと協力して仕事が出来た。僕はまだ自分のことしか考えられていなかったけれど、スタッフの方々がいることで一つの仕事として成り立っていると実感した。次の機会があれば、 自分のことだけでなくカフェ全体を考えられるようになりたいと思った。

望月 太洋