分身ロボットカフェの挑戦 #04「ALSという難病になっても、母親であることは変わらない」

「分身ロボットカフェDAWN」は、様々な事情で外出困難なパイロットたちが、遠隔操作型の分身ロボット「OriHime」「Orihime-D」を操作し、自宅にいながら接客の仕事をするプロジェクト。2018年から4回の短期開催を経て、2021年6月、この「分身ロボットカフェDAWN」が、ついに”常設店”としてオープンすることになりました。この記事では、パイロットとしてカフェで働いてきたメンバーの経験を紹介します。

●今回お話を聞いたパイロット

「分身ロボットカフェDAWN」パイロット
 藤田美佳子(みか)さん

2017年6月、上肢からの発症により筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断。発症前は銀行員、そして出産後に保育士、バリスタをするも、ALSを発症。現在は、精神的に家族を支えながら、高齢者の傾聴や分身ロボOriHimeを用いた仕事をする。
 

今回お話を聞いた内容のインタビュー動画です。ぜひご覧ください。

ALSの診断を受け、「全てを失ってしまった」というくやしさと、喪失感を抱えて

ーみかさんが「分身ロボットカフェ」のパイロットに応募したきっかけを教えてください。

みかさん(以下みか):ALSの確定を受けて、1年半くらいの頃でしょうか。ALSはだんだんと全身が動かなくなっていく進行性の病気です。仕事も辞めて、外にもでかけづらくなっていく中で、いろいろな意味で社会との繋がりを失いかけ、孤独になっていた時期でした。そんなときに、OriHimeを使った「分身ロボットカフェ」のことを知ったんです。もともとバリスタをしていたこともあり、カフェだし、接客だし、私にもできるかも! と、すぐに応募しました。

分身ロボットカフェの様子
みかさんの操作するOriHime-D

ーALSの診断を受ける前は、バリスタをされていたのですね。 

みか:バリスタになったのは、出産後、保育士の仕事を経て、子どもの手が離れてからだったので、ちょっと遅咲きでしたが。実は、病気の症状がで始めたときには、ちょうどバリスタコンテストの全国大会に向けて準備をしていました。

ーそんな腕前だったとは!  

みか:中部代表の1人になれたものの全国大会への選考大会にて症状が出てしまい敗退しました。その後仕事も辞めざるをえなくなり、リベンジも叶わず、すごく悔しくて。これまで自分が培ってきたスキルが役に立たないものに思えて、全て失ってしまったという喪失感がありました。だから、カフェへの参加は、とてもわくわくする出来事でした。

母親らしいことができた! 母としての思いが溢れ出した忘れられない娘の誕生日 

ー「分身ロボットカフェ」期間中の思い出深い出来事を教えてください。

みか:お客様との思い出もたくさんあります! が、ひとつ大きかったのは、娘の誕生日です。

ー娘さんのお誕生日! どんなことをされたんですか?

みか:第1回「分身ロボットカフェ」の期間中に、ちょうど娘の誕生日があったんです。「分身ロボットカフェ」で働いていたおかげで、私から彼女にプレゼントを送ることができたんですね。そのときに、彼女が「お母さんありがとう」って喜ぶ顔が忘れられません。病気に押されがちだった私の、”母としてという気持ち”がうわーーーーっとあふれだしたのを今でもすごく覚えています。

ヘルパーさんと協力して、娘さんのサプライズプレゼントを渡した

ー「まだまだ娘に世話をきたい!」というみかさんのツイートも拝見しました。

みか:ええ、娘がいくつになっても世話は焼いていたいですよ。ずっとかわいいです(笑)。病気でできないことが増えていくと、家族に対しても、娘に対しても、「ごめんね」と言ってしまうことが多くなります。だからなおさら「お母さんありがとう」と言ってもらえる、頼ってもらってることは、とっても心地よいです。

当時のみかさんのTweet

ー仕事をし続けることは、みかさんにとって、とても意味のあることなんですね。

みか:いつもなら私が家族に頼っている感が、仕事するということで、頼られている感に変わるといいますか、そういう瞬間でもあります。娘にとっても、私が遠隔で働くことが今では自然なこととしてあるようで「お仕事がんばってね〜」と声をかけてくれます。それもやっぱり心地いいですね。

やりたいことはかさばらない

ー「分身ロボットカフェ」で、何か失敗したことはありますか?

みか:うーん……失敗……。うかばない(笑)! 失敗はたくさんあったのですが、パイロット同士ですぐに共有して、失敗しながら成長していけたので、楽しかったという気持ちしか今は残っていないです。バックヤードで、OriHime同士が会話するというのは少しシュールかもしれないですね(笑)。よく会話をしながら楽しく働きました。

ーみかさんの前向きさ、素敵です!

みか:はい。「やりたいことはかさばらない」と、いつも娘とも話しています。最近は、体が動かなくなってもお洒落ができるユニバーサルデザインの服を作るプロジェクトの立ち上げにも携われました。あとは、イラストを描くことも好きで。手が動かなくなって諦めがちでしたが、指先でぽんぽんスタンプのように絵を描くアプリを使うことができそうなので、絵本もつくりたいなと考えています。これは、「分身ロボットカフェ」を通じて、パイロット仲間、お客様、多くの人とつながり、刺激がもらえている影響も大きいです。

みかさんが指先で描いた絵

ー「分身ロボットカフェ」で、つながりがどんどん生まれていくこと、いいですね!

みか:仲間やお客様にアイディアをいただいたり。「こういう形で実現できるよ」とツールを教えていただいたり。OriHimeからいろいろなことにつながりました!自分のわくわくから始まったことですが、誰かの夢と繋がっていく事も沢山感じ、それもまた大きな喜びとなっています。
ハンディがあるの小さなお子さんがご来店くださったとき「将来カフェで一緒に働きたい!」という夢をもってくださったんです。小さな子がケーキ屋さんになりたいと同じように、分身ロボットカフェの店員さんになりたいといってもらえる、そんなふうに、だれかの夢につながったのが嬉しかったですね。

ーみかさん、ありがとうございました! 最後に、6月から常設店になる「分身ロボットカフェDAWN ver.β」への意気込みをお願いします!

みか:最初の「分身ロボットカフェ」のときに、接客だけでなく、自分で入れたコーヒーをお客様にお出ししたいねという話をしていました。今回、テレバリスタという新しいテクノロジーを使って、それが実現できそうです!

OriHimeで操作してコーヒーを淹れるテレバリスタ

みか: 「テレバリスタ」というと難しそうな感じに聞こえますけど、コーヒーを淹れておもてなしするということは、誰にもできること。みんなでおもてなしを作り上げていけたらいいですよね。ぜひ、「分身ロボットカフェ」に、コーヒーを飲みにきてくださいね!

「分身ロボットカフェDAWN ver.β」の常設実験店については公式サイトをご覧ください。
https://dawn2021.orylab.com/

みかさんのTwitterアカウントはこちら↓

(取材/文 いずみの編集室)