分身ロボットカフェの挑戦 #05 「車椅子の私が、好きな仕事に出会うまで」

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「分身ロボットカフェDAWN」は、様々な事情で外出困難なパイロットたちが、遠隔操作型の分身ロボット「OriHime」「Orihime-D」を操作し、自宅にいながら接客の仕事をするプロジェクト。2018年から4回の短期開催を経て、2021年6月、この「分身ロボットカフェDAWN」が、ついに”常設店”としてオープンすることになりました。この記事では、パイロットとしてカフェで働いてきたメンバーの経験を紹介します。

分身ロボットカフェ

OriHimeパイロットまやさん

●今回お話を聞いたパイロット

「分身ロボットカフェDAWN」パイロット
 酒井麻椰(まや)さん

脊髄性筋萎縮症(SMA)という神経性の難病のため、ひとりで外出することは難しい生活。現在は週に5日、兵庫県の自宅から、OriHimeを使って、東京のモスバーガー大崎店、神奈川県のcafeツムギで接客の仕事をしている。
 

今回お話を聞いた内容のインタビュー動画です。ぜひご覧ください。

「障害者」である自分。就活をして社会から切り離された気がした

ーまやさんは今、モスバーガーでOriHimeを使って接客のお仕事をされていますよね。最初からOriHimeを使って働くつもりだったのですか?

まやさん(以下まや):いえ、大学4年生の頃、普通に就職活動を始めてみたんですけど、なかなか内定がもらえなくて。就職先が決まらないまま大学を卒業して、どうしようかなあと考えていた時にTwitterで吉藤オリィさんのパイロット募集の呼びかけを見つけて、応募したのが最初のきっかけです。分身ロボットカフェで働いた後に、モスバーガーでのお仕事にも声をかけていただきました。

OriHimeを使って接客の仕事をするまやさん
OriHimeを使って接客をするまやさん

ー分身ロボットカフェがきっかけだったんですね。 

まや:はい。わたしは1歳の頃に脊髄性筋萎縮症(SMA)という病気がわかって、今でも自力で歩くことはできません。移動は電動車椅子で、食事やお手洗いにもサポートが必要で。そういった面もあり、就職活動では内定がもらえなかったんです。

ーなるほど。”就職”には、大きな壁があるのですね。  

まや:そうなんです。大学では手厚いサポートしていただいたので、そんなに困ることはなかったので、就職活動をして初めて、挫折みたいなものを感じました。

成人式にてご両親と。出かけるときは電動車椅子を使う。
成人式にてご両親と。出かけるときは電動車椅子を使う。

ーそれまでは、あまりご自身の病気について不自由さは感じなかったのですか?

まや:病気は私にとっては当たり前すぎて、あまり深く考えたことないです。友達とずっと一緒に進学もしてきました。自分が障害者だということもわかっていたんですけど、就職というタイミングで、学生から社会へ出るという”レベルアップ”の瞬間に、急に社会と切り離されてしまったという感覚になりました。

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働くことは人生で初めての感覚。”みんな、こんな楽しいことしてたん!?” 

ー分身ロボットカフェでOriHimeを使って接客の仕事をしてみて、いかがでしたか?

まや:はじめに思ったのは「みんなすごい楽しいことしてたんやな!」ということでした。アルバイトをしていた友達は、高校時代・大学時代にこういう人生経験を積んでいたのかなって。私にとってはこれが”人生で初めての感覚”でした。

ー”人生で初めての感覚”とはどんなものなんでしょう?

まや:わざわざわたしの働いている時間を調べて会いに来てくれるお客様もいらっしゃいました。Twitterでも「まやちゃんとしゃべるの楽しかった!」とつぶやいてくださる方も。そういう経験をして、「自分が必要とされている」「社会とつながっている」という初めての感覚になったんですよね。毎日がすっごく楽しかったです。

分身ロボットカフェで働くまやさん
分身ロボットカフェで働くまやさん

何かを”任される”って、楽しい! この仕事がいちばん楽しい!

ーTwitterで感想をもらえるのも、リピーターがつくのも、まやさんの魅力あってこそだと思うのですが、もともと接客や、お話をすることは得意だったのですか?

まや:いえ、接客なんてそもそも選択肢にもなかったですよ。体の制限があるので、現地で体を動かして働けない私にはできると思っていなかったです。それに人見知りで、しゃべるのも苦手だと思っていました。自信はなかったです。

ーでは、カフェで働く中で、才能が開花したんですね!

まや:働いてみてはじめて「わたししゃべること楽しいんだ」って自覚できました! それにチャレンジ精神も豊富になったと思います。

ーどんなことにチャレンジされたのですか?

まや:カフェのオープニングのMCをやってみました。これまでは何かを任された経験ってあまりない……記憶にないんです。でも、カフェで「まやちゃんやってみる?」と声をかけてもらって、挑戦していって、どんどん積極的になれました。

OriHime-DでMCをするまやさん
OriHime-DでMCをするまやさん

ー誰かから役割を任されるって、やる気になりますよね!

まや:はい。それに、OriHimeだと、自分が体が動かないという言い訳をしなくてすみます。だから「とりあえずなんでもやってみよう!」という気持ちに自然となれるんです!

ー生き生きと活躍されているまやさんが目に浮かぶようです。今のお仕事が本当に好きなんだなと。

まや:楽しいですもん! 接客のお仕事、とても好きです。それに、お仕事はいちばんたのしい時間です!

OriHime-Dで働くまやさん

ー将来もっとやってみたいことや夢はありますか?

まや:話すことが好きだと気づいたので、OriHimeを使って、病気や怪我で入院している子どもたちの話し相手になりたいなと、考えることがあります。わたしは小さい頃、よく入院をしていました。入院中は、夜がすごく寂しいんです。そんなとき、病院に面会はいけなくてもOriHimeを使えば、一緒に話をすることができるのかなと思います。

ーまやさんの経験とスキルがあるからこそ生まれた夢ですね。今回は、お客様もOriHimeで来店できるサービスも企画中だと聞いています。分身ロボットカフェに、お子さんたちもたくさん来てくださるといいですね。

まや:はい! とても楽しみです! ぜひ分身ロボットカフェにお越しください!

「分身ロボットカフェDAWN ver.β」の常設実験店については公式サイトをご覧ください。
https://dawn2021.orylab.com/

まやさんのTwitterアカウントはこちら↓

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(取材/文 いずみの編集室)